−参加者は何を学んだか−

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  いきさつ

  日本で初めて、中学生を対象としたプログラムとして、アカデミックホームステイがスタートして以来、20年を超えることとなりました。そして、その参加者数が、1万人という膨大な数を越え、さらに、親子二世代にわたる参加者が排出するようになり、過去において実際に参加した方々が、このプログラムをどのように評価しているかということを、早急に、調査しなければならないと思うようになりました。「教育」という視点からホームステイプログラムを考えるならば、プログラムの「成果」や「効果」、「意義」や「目的」が問われ、さらには「結果」が求められるのも当然の帰結であり、主催者としては、参加者を通して、実証的にそれを証明しなければならないという義務感もありました。

 また、日本の歴史上、これだけ多くの若い日本人がアメリカの一般家庭にホームステイした事例はなく、そういう意味では、参加者は過去に前例のない体験をした、ほぼ時代的な先駆者という事になり、そのような異文化体験が、その後の参加者の人生や性格形成に、どのような変化や影響を与えるのかということも、主催者側には大変興味あるテーマでもありました。

 そのような環境でありながら、今回この調査を実施するまで、本格的な参加者の実態調査がなされなかった理由と、それがプログラム発足20年後になされた理由が、それぞれ一つずつあります。

 前者、つまり、これまで実態調査をしなかった理由は、ホームステイに参加して2、3年後にその体験内容を評価してもらっても、未だ冷めやらぬ感動と興奮で、「感情的な評価」となったり、「客観性のない意見」になったりするのではないかという理由からでした。それでは、全体像が見えないばかりか、主催者側に都合のいい、歪曲された「国際交流至上主義」的な理解になり、さらには、国際交流と言う美辞麗句に隠された、商業主義を増長させるだけです。

 実際、これまで毎年、全参加者に対して、プログラム終了直後にアンケート調査を実施しており、それに見られる彼らの声は、「感動した」「また行きたい」「今度は留学したい」「アメリカは第二のふるさとだ」「このプログラムの最大の難点は期間が短いことだ(1カ月のホームステイに対して)」などと、プログラムを絶賛するものばかりです。大変ありがたいことではありますが、いくら主催者でも一時的な感動によりもたらされた、感情的な評価としか理解しません。これらの内容は、翌年度のプログラム企画の参考とはなり得ても、プログラムがもたらす教育的評価や成果を推し量る材料とは、無縁のものです。

 プログラムがスタートし、既に20年が経過し、調査時点での参加者の年齢は11歳から41歳までの広範囲に広がっており、参加者の6割が社会人となった今でこそ、5年前、10年前の「1カ月の体験」を客観的な視点で、理性的に分析し、評価できるのではないかという考えが根底にあったからでした。

 次に、今回、その調査が行われた理由は、最近の「ホームステイの海外旅行化現象」に見られる危機感からでした。すなわち、現在、ホームステイは数多くの観光旅行会社によっても実施されるようになり、時には、ホームステイは「学生のための海外旅行」と言ってもいいほどの安易さが見られるようになり、お世話するホストファミリーは単なるホテルの代用といっても過言ではないような、そんなプログラムも横行するような時代となっています。

 その背景には、参加者やその保護者の意識も「異文化理解」「国際交流」「体験学習」という当初のプログラムの趣旨から、「学生のための海外旅行」という気軽で、気楽なものへと変わりつつあり、日本経済がもたらした豊かさが、この環境を助長させているようにも思えます。また、プログラムは本来、教育的な視点でとらえられていたものが、観光旅行会社の参入により、旅行のジャンルの一つとしてとらえられ始め、さらには、主催者側の商業主義的な考え方もそれに拍車をかけているのが現状です。そこには、「何をどう学び、何をどう伝えるか」という参加者の姿勢と、「何をどう学ばせ、何をどう伝えさせるか」というプログラム主催者側の視点が、大きく欠落しているように思えます。

 保護者がこれだけの高額な経済的負担を負ってまで、ホームステイに行かせる必要が、あるのでしょうか?保護者がホームステイにプログラムを通して期待しているものは何なのでしょうか?保護者の期待しているものは、果たしてプログラムを通して本当に得られるのでしょうか?

 以上のようなプログラムに関する様々な疑問が次々と浮かんできます。一言で言うならば、保護者が「なぜホームステイに参加させようとしているのか」という疑問を真摯に受けとめ、考えた場合、主催者側に負わされる「教育的効果の期待」というものを感ぜられずにはいられません。そのような環境の中で、「学生のための海外旅行」としてのホームステイではなく、「教育の一環」としてのホームステイでなければならないという強い思いが、今回の実態調査の根幹をなしているわけです。

 しかしながら、そのような過去の参加者に対して、ある程度の時間が経過した後、プログラムの成果を大局的な視点で、客観的に考えていただくという事は、一つの恐怖でもありました。参加者が、果たしてどのような結果を主催者に突きつけてくるのであろうかという恐怖感です。そういう意味では、今回の調査は、まるで、長期間にわたり受験し続けていたその試験の結果を、今回初めて知らされるという思いでした。

 最終的に、次ページから始まる実態調査ができあがりました。この結果に満足しているわけではありませんが、少なからずとも現実では、正直言って「ホッ」としております。私どもの予想以上にプログラムの成果を評価されたと思う部分もあれば、予期しない評価を知らされた部分もあります。結果については何もコメントする必要もないと思います。読んでいただければ分かることですし、参加者が多くのことを語ってくれており、これ以上でもなければ、これ以下でもありません。この調査結果を真正面から受けとめ、より教育性の高いプログラムを提供していくことが、これまでの参加者に対する感謝のしるしであり、私どもができる唯一のことだと思っております。

 最後に、この実態調査にご協力いただきました方々に、厚くお礼を申し上げたいと思います。

 
 
     

 

※「ある中学生のホームステイ日記」を、ぜひお読みください。
【日   記】